動く高級ホテル!? 業界初!完全個室型高速バスが登場!
動く高級ホテル!? 業界初!完全個室型高速バスが登場!
2017年1月18日、業界初の完全個室型の夜行高速バス『DREAM SLEEPER』が、東京−大阪間で運行を開始しました。高額といわれる料金設定ながら、週末の予約は満杯。移動の快適さと時間の有効活用を実現する、メディアの注目度も高いこの豪華バスについて、関東バスの丸山営業所を取材しました。
写真は左から、関東バス・経営管理室長の久永さん、同社丸山営業所・副所長の石場さん、同営業所・所長の秋葉さん、経営管理室主任の大田さん。
■動く高級ホテル? 業界初の完全個室型『DREAM SLEEPER』に集まる期待
- 業界初の完全個室型の車内
車両の開発は両備ホールディングスが担当
高速夜行バスのこれまでの印象は「金額は安いが長時間で疲れやすい」というイメージがどちらかといえば強かったかもしれません。しかし、快適さを追求したさまざまな車両の登場で、「快適さ」「豪華さ」が高速バスのトレンドとなりつつあります。
その中でも、いまメディアの注目が高いのが業界初「完全個室型」の『DREAM SLEEPER』。NHK、民放キー局のテレビのほか、朝日新聞など大手メディアに数多く取り上げられています。
1月15日現在までのwebの掲載だけで976件。1月末までのテレビは、ブラジル、韓国からのテレビ取材を含めて20件。2月2日までの新聞記事掲載は、57件とすさまじい勢いでした。
運行開始のきっかけについて、「もともと両備ホールディングスさんと倉敷行きバスを共同で運行していたのがご縁で、両備ホールディングスさんの方から声をかけていただきました」と語るのは関東バス・経営管理室長の久永さん。
「初代の『DREAM SLEEPER』は中国バスさんで運行されています。それを東京・大阪間で、さらに進化させるというスタンスで、両備ホールディングスさんと共同運行しています
」
■『DREAM SLEEPER』の車内装備
チルト(高さ)調整、リクライニング調整、フットレスと調整がスイッチで簡単に行えるほか、調光機能つきの照明、無料Wi-Fi、無料配布されるこだわりのアメニティグッズ(水、スリッパ、ウエットタオル、歯ブラシ、耳栓、アイマスク、ヘッドホンカバー)、オーディオ、コンセント(AC/USB)、プラズマクラスターイオン発生器など、車内で快適に過ごせる装備が充実しています。
その他、特徴的なのは、各個室に装備された室内カメラですが、プライバシーにも配慮した構造になっています。
「完全に個室になってしまうため、席の上にカメラを設置して、運転士のモニターから見えるようになっています。しかしこれは、あくまでも保安上の観点からのもので、お客様が立っていると頭が見え、立っているか、座っているかを確認するためのものです」
- パソコンなどの作業もできる引き出しタイプの机
車内には無料Wi-Fiも装備されている
- スイッチ1つでゼログラビティ(無重力)を再現する
話題のリクライニングシート
- 運転席の左右についたモニターで、
個室の安全確認ができる
- 客室の背後には保安のためのカメラや
緊急SOSスイッチも設置されている
- アメニティグッズ(水、耳栓、アイマスク、歯ブラシ
ウェットタオルなど)とヘッドホン
- リクライニングシートのスイッチと
プラズマクラスター
- 温水洗浄機能、水浄化機能つきトイレ
- 足元には、こだわりのじゅうたんと
アメニティグッズのスリッパ
- 温水洗浄機能、水浄化機能つきトイレ
■動く高級ホテルとしての『DREAM SLEEPER』
・高めの料金設定に込められた戦略
『DREAM SLEEPER』は、完全個室の豪華さのほか、高めと言われる20,000円の料金設定について、話題になります。その料金設定について、関東バス・丸山営業所の秋葉所長にお話を伺いました。
「バスを完全個室にすると、乗車いただけるのは11名です。バスの内部を相当改装していますので、採算ベースには料金が高めでないと厳しい。ただ、「動くホテル」という意味では、20,000円という金額は、新幹線で15,000円、ホテルに宿泊した場合で7,000円くらいと見れば、料金が高いことはないと思います」
そして何よりも「ホテルの宿泊や始発の新幹線を使うよりも、寝ている間に移動できて、時間を有効に使えるという利点もあります。現在、海外旅行客の影響で、ホテルもとりにくいという話も聞いていますので、それも含めれば、このバスの需要もあるのではないでしょうか」ということです。
■運行の現場から見た『DREAM SLEEPER』
・『DREAM SLEEPER』の運行体制
『DREAM SLEEPER』の運行体制について、関東バス・丸山営業所の石場副所長は「『DREAM SLEEPER』の運行担当者は10人で、通常の夜行高速バスとも兼務になります。『DREAM SLEEPER』は高速バスの中でもワンランク上になりますし、お客さまの動向には「快適さ」という点でも気を使うことが多くなります」と教えてくれました。
また、秋葉所長のお話では、その10名の方は、「一般の路線バスの運転士から20名を選抜し、さらにその中でもベテランの者を選抜しています」ということで、「もちろん、ただ10名を選ぶだけではなく、徐々に対応できる人員を増やしていく」ことが必要となります。
・豪華さの裏側で求められる、乗務員の細やかな接客対応
秋葉所長は、続けて次のように話してくれました。「ドアのノックする箇所が響くところだと、反対側のお客様も顔を出してしまうことがあります。また、女性のお客様などは逆にノックに気づかれないこともあり、ガラガラと開けると失礼になるので、ドアを少しずらす程度に開けて、気付いてもらいます。それから『よろしいでしょうか?』と声をかけながらドアを開けるなど、マニュアルでは説明しにくいような細かい配慮については、それを経験した運転士が、ほかの運転士に引き継ぎ報告などで共有するようにしています」ということです。
「入口の3段目以降は土足厳禁のため、使い捨てのスリッパをお出ししたり、夏はお水を乗車の直前まで冷やしておいて、乗車後に各部屋に配る、などの対応もあります」。また、池袋での乗車案内は「『DREAM SLEEPER』とは別便のバスが、10分後に出発するため、11名のお客様に対して、ひとり1分以内の対応が必要となる」そうです。「雨のときは傘立てに傘をおく対応など、あらかじめシミュレーションさせておく必要もあります」とのことで、マニュアルでは追いつかない、細かな接客対応があるのも事実です。
このほか、「専門の講師の方を呼んで、接客マナーの講習なども実施している」そうで、乗務員の方のきめ細かな対応力が求められる業務となっています。
利用者のニーズはどこにあるか?
「当初はビジネスユースを考えていましたが、往復で利用される女性のお客様もいらっしゃいます。今後は、ニーズに合わせてサービスを変えることも必要になるでしょう」と語るのは経営管理室長の久永さん。
「今のところTwitterやFacebookなどの反応を見ても、決してお叱りなどの評価はなく、よかったと思っています」
もちろん、これからの戦略や利用者のニーズを探るためには、「乗られている方が、実際にどのように感じているかが重要です。これからはお客様の声がひろえるような対応も、別途検討したいと思います」ということです。
編集後記
大手メディアからも大きな注目を集める業界初の完全個室化の高速バス、関東バス・両備ホールディングスの東京−大阪間『DREAM SLEEPER』。このバスの誕生の背景には、さまざまな方々の熱い想いと、現場での地道な努力と細やかな接客対応の積み重ねがあったことが、取材を通して見えてきました。他の交通機関との差別化を図り、新しいサービスの進化によって、バス業界がさらに注目を浴び、新しいニーズの掘り起こしにつながっていくことが期待されます。