未来へと走り続けるバス!『第44回東京モーターショー2015』
未来へとココロを走らせるバスの勇姿!『第44回東京モーターショー2015』
2015年10月29日から11月8日まで、江東区・有明の東京ビッグサイトにおいて『第44回東京モーターショー2015』が開催されました。「きっと、あなたのココロが走り出す。"Your heart will race."」をテーマに、世界11ヵ国から合計160社が参加。そうした中で、新しいバスの姿や、バスがもたらす新たな社会モデルにも大きな注目が集まり、新型バスに乗ってみようと列をつくる来場者の姿も多く見られました。まさに未来へとココロを走らせるような先進のバスについてお伝えします。
東京モーターショーに出展されたバスを通して、改めて公共交通機関であるバスが私たちの暮らしに密接に関わっていることを感じていただけるでしょう。
■豊かなラグジュアリー感のあるバスのシート
●三菱ふそうの高級感あふれるバスの内装
まずは、三菱ふそうのブースを訪問。三菱ふそうトラック・バス株式会社の藤岡佳一郎さんと品田善之さんに、出展のコンセプトなどについてお話をうかがいました。「今回の展示は実車ではなく、内装にフォーカスしました。お客様にラグジュアリー感のある内装を体感していただきたかったからです。最近のお客様の傾向としては、二極分化が進んでいます。旅をリーズナブルに楽しみたいというお客様と、少しお金をかけてゆとりを持ったリッチな旅をしたいというお客様です。そうした際に、お客様が直接触れて、高級感を感じていただける部分は、内装になります。そこをよく知っていただくための展示としました」と、今回の出展内容について語っていただきました。
- 三菱ふそうトラック・バス株式会社の
藤岡佳一郎さん(左)と品田善之さん(右)
- バスの内装・シートを体感できる、
三菱ふそうの特設ステージ
●さまざまな機能のある先進のシートの数々
三菱ふそうが出展したバスのシートについてうかがいました。「新しいシートが3種類あります。まず1つめは、シート全体がゆりかごのようなチルト機構になっていて、リクライニングやレッグレストを組み合わせることによって、ほぼ寝ているようなリラックスした状態を創出します。夜間など長時間の走行でも疲れが軽減できるようになっています。2つめのシートは、幅を広げたことで、高級感が得られるようになっています。これにマッサージ機能やシートヒーター、ファンによる送風機能、そして腰まわりを調整できるランバーサポート機能などが加わり、快適な座席環境を実現しています。3つめは、EvoBus(エボバス)のシートを展示しています。参考出品ではありますが、国産のメーカーにはない座り心地が特徴です。着席したシートが沈み込まず、硬めではありますが、見た目以上のホールド感があります。新鮮な着座感覚がお客様にも好評です」
- 手元で簡単にリクライニング操作することができます
- シートをフラットにすると、
本当に快適な寝心地を楽しむことができました
- マッサージやシートヒーター、送風、ランバーサポート
など、タッチパネルでラクラク操作できます
- 快適な旅を可能にする、さまざまな機能が付いています
- EvoBus(エボバス)のシート
独特のホールド感が魅力のシートです - ゴーグルを装着して体感する「ふそうエアロVRシアター」
運転の最後には、恐竜時代にタイムスリップする
楽しいサプライズも用意されていました
●厳しい安全基準に適合しながら独自性を創出
「2012年からシートの法規制が変わり、乗員保護のための安全基準がより厳しくなりました。例えばシート本体が、これまでの基準より大幅に強い衝撃まで耐えられることが要件となっています。さらに、シートの背裏に取り付けるアクセサリーにも、一定基準以上の突起物であってはならない等の規制が加わっています。そうした厳正な対応が求められるなかで、逆にシートにオリジナリティを出したいという動きも見られます。私たちの取り組みはそうしたニーズに対応し、より差別化をはかることができるという点で、多くのバス事業者さんにも注目していただいています」
さまざまな構成パーツから成っているバスですが、改めてシート機能の大切さが分かります。これからはシートに注目してみるのも、バスの大きな楽しみ方かもしれません。
●バーチャル映像によって安全装備を体感
先進のシートを体験した後は、「ふそうエアロVRシアター」によって、走行中のバーチャル映像を体感しました。ゴーグルとヘッドホンを装着して見える風景は、運転席そのまま。首を動かすと見える範囲も変わり、シートの揺れなども連動して、実際にバスを運転しているような気分になります。これによって、三菱ふそうのバスの安全装備について、ドライバー感覚で学ぶことができました。
■最新の安全技術が支える快適なバスの旅
卓越した安全性能と優雅なホスピタリティを誇る、日野セレガの「スーパーハイデッカ」
●日野セレガ標準装備の「ドライバーモニター」
続いて、「Transport Heroes」〜情熱をはこぶ。夢をとどける。をテーマとした、日野自動車のブースを訪問しました。まずは、最新の安全技術を搭載し、快適な旅を演出する大型観光バス「日野セレガ」と対面。既に標準装備されている「ドライバーモニター」の技術について、紹介イベントにて理解を深めました。「ドライバーモニター」とは、ドライバーの顔の向きや眼の開閉状態を検知して注意力低下を警報する安全技術。以前にこの【BUS STOP】14号でも紹介させていただきました。実際に運転席で、多くの人がこの技術を体験し、先進の安全性能に納得されていました。
- ちなみに、運転手が馬やウサギだった場合、
「ドライバーモニター」は作動しないそうです
あくまでも人間の顔や眼を認識して、
その動きに合わせて作動するのですね
- 日野セレガの前で大画面を使いながら、「ドライバー
モニター」などの分かりやすい紹介が行われました
●少しでも早く安全を届けたいという想い
「さらに、日野自動車株式会社の柳澤昌詩さんにお話をうかがいました。「日野自動車では、『交通事故死傷者ゼロ』をめざして、さまざまな取り組みを行っています。これはトラックもバスも同じです。ドライバーの『疲労軽減』『集中力維持』、そして車両自体の『挙動安定』『衝突回避』『被害軽減』。この5つの視点から、さまざまな安全装備の開発・実用化を進めています。将来の安全に向けては、自動運転技術の研究にも取り組んでいますね。少しでも早くお客様に安全をお届けしたいという想いから、既に商品化されているものも多く、着実に歩みを進めていますが、歩行者対策など、さらに研究を積み重ねているところです」と、パネルを前に説明していただきました。
- トータルセーフティの取り組みについて
まとめられた展示パネル
- 日野自動車株式会社の柳澤昌詩さん
■水素で走る! ユニバーサルデザインのバス
明るく爽やかな外観や大きな窓も「FUEL CELL BUS」の特徴です
- 発電しても水しか排出しないという
環境性能が大きなメリットです
●日野自動車が提案する「FUEL CELL BUS」
続いて、同じく日野自動車が提案する、水素を燃料として自ら発電して走る燃料電池バスのコンセプトモデル「FUEL CELL BUS(フューエル セル バス)」のもとへ。空気中の酸素と水素タンクの水素を化学反応させて発電し、その電気でモーターを動かして走るバスです。走行時の二酸化炭素排出量ゼロという高い環境性能に加え、外部給電機能も配備。クリーンエネルギーを活用する将来の水素社会実現に向けた輸送手段として期待されているところです。
燃料電池バスはエンジンを積まない分、車内のレイアウトの自由度が増し、広くてフラットな室内空間を確保
人間工学に基づいた、座り心地のよいシートが設けられています
家族みんなで楽しく腰掛けられるような工夫も。発電した電気を供給できるコンセントも用意されています
- 車いす利用者やベビーカー利用者が使いやすいように、
さまざまな配慮もなされています
- 手すりの見やすさや握りやすさなども考慮され、
握力の弱い方でも安心。行き先などの表示も、
たいへん分かりやすいものになっています
- 「FUEL CELL BUS」の運転席
●「暮らしやすい社会を支える移動」を素敵にかなえることのできるバス
そして、「FUEL CELL BUS」のショーが行われました。そのテーマは、「暮らしやすい社会を支える移動」。給電できるバスは、電動アシスト自転車などとの連携が可能。それぞれのバス停に用意されているコミュニティサイクルと連動するなど、さらに便利な交通社会を形成することができます。「作った電気をあげることのできるバスですから、電動アシスト自転車を積んで充電しながら走ることもできます。ですから、自転車の少ないバス停に割り振ることも容易にできるんです。バスによる線での移動を、面への移動へと広げて行くことも可能になるかもしれませんね」と柳澤さん。ワクワクするような未来が、すぐそこまで来ているように感じられました。
- 乗降口がプラットフォームと同じ高さで
フラットになっているため、車いすでも
段差を気にせずスムーズに乗降できます
- 燃料電池バスのプラットフォームは、
自動改札機で精算も簡単
外部給電機能を活用し、電動アシスト自転車や
電動車いすと連携することもできます
■今まで以上に快適で安全に利用できるバス
誰もが今まで以上に快適で安全に利用できるようデザインされた大型路線バス「いすゞ新型エルガ」です
●人へのやさしさがアップした「いすゞ新型エルガ」
続いて、いすゞ自動車のブースへ。ここでは「いすゞ新型エルガ」が勇壮な姿を見せていました。早速そのコンセプトについて、いすゞ自動車株式会社の三橋英二さんと、いすゞ自動車販売株式会社の藤井勇一郎さんにうかがいました。「Always Next to You 〜暮らしのそばで、「運ぶ」は未来へ。を出展のコンセプトにしています。新型エルガは8月にフルモデルチェンジが発表されたばかりの次世代路線バス。これからの高齢化社会に向けてノンステップエリアを拡大し、より利用しやすくなったのが大きな特徴です。今まで床下にあった燃料タンクを左タイヤハウス上に設置し、段差がなくなったために優先席が横向きから前向きに。これによって通路幅も広がりました」
- まさに暮らしのそばで、うれしい大きな
変化が生まれています。なお、展示車両では
LED式のカラー行き先表示器を採用しています
- いすゞ自動車株式会社の三橋英二さん(左)と、
いすゞ自動車販売株式会社の藤井勇一郎さん(右)
●2015年度グッドデザイン賞を受賞
こうした新しい取り組みと、シンプルでムダのないデザインなどが評価され、いすゞ自動車のエルガシリーズは、グッドデザイン賞を受賞しています。「ノンステップバスのさらなる普及のため、新型エルガシリーズはワンステップ仕様を廃止し、ノンステップ仕様に一本化しています。室内空間は横へのゆとりとともに、縦にも豊かな広がりが出ました。優れた走破性、安全性も確保しているんですよ」と、三橋さん・藤井さんに語っていただきました。さまざまな研究と努力が一つになって、バスは未来へと動き出しています。
- 標準仕様では燃料タンクを左タイヤハウス上に設置
室内では床面に燃料タンクの段差がなくなりました
- 客席シートはシートバックを樹脂化し、
軽量化と新デザインを実現しています
編集後記
燃料電池バスの紹介では、単なるゼロエミッションというエネルギーの話だけではなく、バスを中心とした次世代の交通システムを予見させる、まさに「モーターショー」の醍醐味あふれるものでした。どの出展も、「これからのバスは、どのように社会に貢献できるか」という深みや広がりのある内容になっていました。誰もが暮らしやすい未来を創造するために、バスはどうあるべきか。その視点は、安全・安心、快適性、ユニバーサルデザインなど、多岐にわたっていました。公共交通機関の未来に想いをはせることのできるイベントでした。